ストーリー

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最強の格闘家のみが手にすることが出来るという「秦の秘伝書」。

紀元前の始皇帝の時代、3本の巻物に分かれて記されたその秘伝書は、全てが揃った時に真の効力を発揮すると言われている。
いつの時代も、腕に覚えのある格闘家がこれを手にいれんと、争いを繰り返してきた。

そして、2000年以上の時を経て、今、秘伝書の1本はサウスタウンにあるという。
数奇な運命の糸に操られるが如く、屈強な者たちが、秘伝書のもとに集まってきた…。






香港―――

港の一角にある倉庫の中から、その男は現れた。

"フッ、口ほどにもない連中だったな。"

男の口元は、冷酷な笑みを浮かべている。
倉庫の中では、数人が血塗れになって倒れていた。
全て、この男の仕業なのだ。

"相変わらず見事ですね。"

背後からの声に、男は振り向いた。

"秦の秘伝書の所在は判ったか?"

"はい。サウスタウンで、秘伝書の1つが確認されました。"

"ほう、サウスタウンか…。あそこはギースとかいう奴が牛耳っていた街だったな。確か奴は死んだと聞いたが。"

男の口振りには、既に勝ち誇ったような響きがあった。

"サウスタウンにキング・オブ・ファイターズ…。なるほど、全ては秘伝書が引き起こしたのかもしれんな。"

…その夜、男はサウスタウンに向かうため、香港を発った。






"この街も随分変わったな。"

謎の男が香港を発った頃、サウスタウンのメインストリートを走り抜ける車の後部座席に、1人の人物がいた。

"あれから大勢の無法者たちが流れ込み、以前より物騒な街になりました。しかし、タワーは健在ですので、ご安心を。"

助手席の男、ビリー・カーンが答えた。

"そうか。私のいない間にそんなことに…。フフフ、市長や警察署長もさぞ苦労していることだろうな。"

"皮肉にも、ボガード兄弟のやったことが裏目に出た訳です。"

"しかし、この街も直ぐに元通りになる。このギース・ハワードの手によってな。"

ギースの言葉に、ビリーが頷く。

"ギース様、見えてきました。"

車は、夕闇にそびえるギースタワーを目指して走る。

"見ているがいい。これからが、私の新しい野望の始まりだ。"






"俺の姿を見たら、リチャードの奴どんな顔するかな。"

さっきまでテリー・ボガードは、親友の顔を思い浮かべながら、懐かしさに浸っていた。
パオパオカフェ2号店オープンの知らせを旅先で聞いたテリーは、祝福のために武者修行を中断して、サウスタウンに帰ってきたのだ。

だが、街に入って現実を見るに従って、テリーの表情は次第に曇っていった。

"このザマは、何だ。あの頃よりも酷いじゃないか…。これも全て、ギースという力を失くしたせいだと言うのか…。"

複雑な思いで街を歩くテリーは、やがてギースタワーの前にやってきた。
昨日のことのように死闘の記憶が蘇ってくる。

(ギースよ。お前は俺のことを嘲笑っているだろう…。だが見ていろ。この街は俺の手で守ってみせるぜ!)

しかし、テリーは知らない。
タワーの主、ギース・ハワードが復活を果たしたことを。
そして、更なる恐ろしい敵が、サウスタウンに乗り込んできたことを…。
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