プロローグ

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いつから存在するのかは、誰にも分からない。

そこには、貪欲なる意志のみがあった。

太古より存在するその意志は、ある時は町を、ある時は国を丸ごと滅ぼしてきた。

やがて彼は、その闇なる力の像幅に欠かせない、供職のシステムを確立する…。







香港。

広大な中庭に、2人の格闘家が対峙していた。
挑戦者は、褐色の肌を持つたくましい男だ。

地面は鮮血に染まっている。
だが、彼の三日月刀は、ただの一度も相手をとらえる事ができていない。
一方的な闘いであった。

やがて彼は、力尽き倒れる。

"愚かな者よ、我が血肉となるがよい。"

重苦しい声が響いたのち、挑戦者の体は、まるで砂のように崩れ去っていた…。







武術大会『FIST(Fighting Instinct Severe Tournament)』。
およそルールのないこの大会は、死者が出ることも珍しくないほど過酷な大会であった。

だが、あらゆる格闘家たちにとって、この大会は大きな意味を持つ。
『FIST』で優勝することは、地上最強であることと同義だからである。

しかし現在、最強の二文字は、ただ一人の男によって独占されていた。
…その男、大会の主催者である黄(ホァン)財閥の頭首は、第一回大会で勝利を手にして以来、常に『FIST』優勝者として君臨し続けている。

莫大な賞金、そして「地上最強」という至高の栄誉。
それらを手に入れるため、格闘家は己を鍛え、闘い続ける。

『FIST』では、最後に勝ち残った者のみが、前年度優勝者と渡り合えることになっている。
だが、公開されないこの最終戦に赴いた格闘家は、決して生きて戻ってはこないとも言われている。

今また、武術大会『FIST』が開催されようとしている。
そしてまた、新たないけにえが選抜されようとしている…。
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